活動報告(2025年度)

活動報告(2025年度)

2025年6月16日〜2026年3月15日

finneganswake.net

ノート
新訳
イベント
刊行物
配信番組
友の会

はじめに

フィネガンズ・ウェブは翻訳家の早川健治と研究者の今関裕太が共同運営している任意団体です。当ウェブサイトでは日本語で『フィネガンズ・ウェイク』を読む読者のみなさまのために次のリソースを提供しています。

  • フィネガンズ・ノート 原文への語句単位での詳しい日本語註釈。
  • 新訳 フィネガンズ・ウェイク 正確かつ高水準な日本語新訳。

ノートと新訳はどちらもパソコンおよびスマホ使用者を想定したレイアウトとなっており、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-SA 4.0)に基づいて一般公開されています。

上記の活動を軸にしつつ、私たちは『フィネガンズ・ウェイク』をとおして国際的な文学交流を促進する目的でいくつかのイベント(形式は対面とオンライン、場所は日本とアイルランド)を開催しました。また、新訳を画家キャロル・ウェイドのArt of the Wakeプロジェクトの絵画と見開きでレイアウトし、マット紙にフルカラー印刷した冊子シリーズ『進行中の翻訳』の制作にも取り組んでいます。

さらに、フィネガンズ・ウェブに先立つ姉妹プロジェクトとして、2022年10月より「フィネガンズ・ウェイクを読む」という配信も行ってきました。2026年3月現在、140回以上の読解配信で第1巻の第1章から第7章までを網羅しており、屈指のゲストをお招きしての特別インタビュー配信も10回以上開催しました(詳細は後述)。

当ウェブサイトのコンテンツは、数行のコード(JavaScriptとCSS)を除けば、註釈や翻訳、報告書などを含め100%人間が作ったものであり、AIは一切使用しておりません。

フィネガンズ・ノート

第1巻第2章・第3章・第4章のノートとして、合計3,130個の日本語註釈を公開しました。註釈は一つひとつ早川または今関によって執筆され、複数回の校閲・校正を経ました。註釈では語句に含まれるモチーフや多言語駄洒落を解説し、ジョイス自身が使ったものを含む一次資料へのリンクを提供しました。また、重要なモチーフにかんしては、さらに踏み込んだ解説を行いました。

I.2 – ノート
I.3 – ノート
I.4 – ノート

新訳 フィネガンズ・ウェイク

第I巻第2章を和訳し、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-SA 4.0)に基づき無料で一般公開しました。『フィネガンズ・ウェイク』の高品質な和訳が無料で一般公開されたのは、日本語の翻訳史上でこれが初めてのことです。

たった18ページの長さの原文を翻訳するために、700本以上の註釈が用意され、300時間以上の労力が費やされました。それによって、今回の新訳は『フィネガンズ・ウェイク』の和訳としてこれまでで最も正確かつダイナミックなものに仕上がっていると言っても過言ではないでしょう。

私たちの新訳の文体は、『フィネガンズ・ウェイク』に特有の重要な特徴を網羅的に再現しています。具体的には、先行作品や歴史的背景への参照、多言語性、さまざまな固有名詞、スラングや方言、語順や構文、曖昧さのグラデーション、脚韻や頭韻、ユーモア、歌唱可能性、そしてHCEやALPを表す文字列(‘enos chalked halltraps’, ‘a lady pack’等)の再現です。

ジョイスの原文を忠実かつ包括的に再現した当新訳は、日本語の文芸翻訳における一つの達成でもあります。『フィネガンズ・ウェイク』の忠実な翻訳は、日本語の読者にとってアイルランドの文化や歴史がもつ豊かな複雑さへの入口として機能するだけでなく、日本語という言語に新たな開放性や可能性の息吹を与えるものでもあると私たちは考えています。

I.2 – 新訳

イベント

フィネガンズ・ウェイクを観る—アダム・シーリグ監督との夕べ
2025年10月31日 | 東京 | agréable*musée

カナダの劇団One Little Goatが作成している朗読映画‘Finnegans Wake’からの抜粋が上映されました。各抜粋の上映後に、アダム・シーリグ監督(カナダから来日、通訳は中央大学の平繁佳織准教授)が今関裕太と対談を行いました。また、抜粋部分に相当する新訳テキストを今関裕太が朗読しました。

フィネガンズ・ウェイクへの門戸を開く—フィネガンズ・ウェブという試み
2026年1月15日 | ダブリン | ジェイムズ・ジョイス・センター

ダブリンのジェイムズ・ジョイス・センターの一室にて満員御礼のイベントが開催され、フィネガンズ・ウェブの仕事の舞台裏について早川健治がプレゼンテーションを行いました。来場のみなさまとの質疑応答の時間では、新訳プロジェクトにかんする質問が圧倒的に多かったです。

フィネガンズ・クイズ Live Ver. in 東京
2026年2月4日 | 東京 | 本屋B&B

『フィネガンズ・ウェイク』に着想を得たパブクイズイベントが、早川健治と今関裕太の登壇で、本屋B&B(Book & Beer)というおあつらえ向きの会場で行われました。来場参加のみなさまは各自コースター型の解答用紙を受け取り、アイルランドの歴史や文化、そしてジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』執筆にまつわるエピソードを扱った10問のクイズに挑戦していただきました。具体的なテーマとしては、ビールとワイン、ハリエット・ショー・ウィーヴァーによるジョイスへの支援、ハンプティ・ダンプティ、トリスタンとイゾルデ、『ケルズの書』、1169年アングロ゠ノルマン侵攻(またはアングロ゠ウェルシュ侵攻)、海賊女王グローニュエイルの生涯、アイルランド独立戦争、そして『フィネガンズ・ウェイク』和訳の歴史が扱われました。

刊行物

『フィネガンズ・ウェイク』第I巻第2章の新訳を『進行中の翻訳』と題した冊子として刊行しました。同作にはアイルランド在住の画家キャロル・ウェイドによるページごとの絵画を所収し、原文ページごとに新訳テキストとウェイドの絵を見開きでレイアウトしました。巻末には今関裕太による解説と訳者によるあとがきを収録し、マット紙にフルカラー印刷という仕上がりとなっています。先述の「フィネガンズ・クイズ」の会場では限定版が販売され、現在は通常版をこちらからオンラインで販売中です。

配信番組

「フィネガンズ・ウェイクを読む」は、文字通り『フィネガンズ・ウェイク』を読むための配信番組です。月額メンバー(会費¥1,500/月)限定で、毎週の読解配信を行い、過去のアーカイブ動画をすべて視聴可能にしています。特別ゲスト回では、作家の多和田葉子、画家のキャロル・ウェイド、そしてジョイス研究者・翻訳家の梁孫傑を始めとする多くのゲストにインタビューを行いました(メンバーの方々はこちらもアーカイブ動画を視聴可能です)。

本番組では『フィネガンズ・ウェイク』の原文と柳瀬訳を毎週1〜2ページのペースでじっくり読み解いています。2026年3月の時点では、140回以上の読解配信を行い、第I巻の第1章から第7章まで(pp.3-195)を読み終えました。

本配信番組は厳密にはフィネガンズ・ウェブの一部ではなく、あくまで姉妹プロジェクトです。しかし、同番組は「フィネガンズ・ノート」の土台であると同時に、日本の『フィネガンズ・ウェイク』読者が集まるプラットフォームでもあり、フィネガンズ・ウェブにとって重要な基盤を提供しています。

フィネガンズ・ウェブ 友の会

フィネガンズ・ウェブは公的な資金援助が一切なく、民間の個人や団体のみなさまのご厚意のみによって支えられています。今後もフィネガンズ・ウェブには続いてほしいと思ってくださった方は、ぜひ「友の会」へのご参加をご検討ください。